利用者としてのクレカに関する最低限の基礎知識
既にクレカを持っている学生、説明会に参加した人にとっては常識レベルかもしれませんが、意外と知らない人も多いため、確認程度に説明しておきます。
基本的にはクレカの利用には手数料はかからない
1回払い、もしくは2回払いであれば、基本的に手数料はかかりません。
3回以上の分割払いになると、利子が付きます。分割すればするほど、手数料は高くなる。
毎月自分で定めた一定額を返済していく払い方のこと。
例えば、毎月5000円を払うリボ払いに設定すれば、今月10万円のバッグと2万円のディナーをクレカで決済したとしても、毎月5000円ずつ返済して行けばよい。
分割払いに近いシステムです。
とはいえ、やっていることは長期借入の「借金」と同じですから、返すまでの期間が長くなればなるほど、利子が付きまくる。
言い方は悪いですが、金融リテラシーのない人の場合「毎月たくさん利用しても、5000円払えば良いのか」と利子の事を全く考慮せずに謎の誤解をしてしまうため、社会的に問題にもなりました。リボ払いは借金しているという認識が薄れてしまう支払い形式だから、まず使わないのが無難。
性格の悪いクレジット発行会社の場合、初期設定でさりげなくリボ払い形式にしているところも多いため、クレカを作る場合は注意。リボ払いは自然と支払期間が長くなり利子が付くため、非常に収益性が高いという背景があります。
クレカ初心者は、出費の管理がしやすい1回払いで済ませましょう。1回払いで払えないのであれば、そもそも買わないスタンスで。
カードは現金よりも安全な場合も多い
「クレカ=危険」は、あんまりにも短絡的。
海外の場合、むしろ現金を持ち歩いていることが怖いと考えられており、クレカ払いが一般的な国も多いです。
なぜなら、財布を落としたり、スラれたりしたら、現金の方が盗られる可能性が高いから。
財布に入った現金は抜き取ってしまえば、基本的には後を追うのは非常に困難であるため、あきらめざるを得ない場合がほとんど。
一方で、もしクレカの盗難にあった際には、迅速にクレジットカード発行会社に連絡することによって、そのカードの利用を停止することが出来ます。盗んだ人は、利用しようと思えば跡がついてしまうため、利用することが出来ません。
また、確かにクレジットが不正利用されるケースは0ではありませんが、磁気カードからICカードの切り替えが進み、年々セキュリティは強固なものになってきています。また、クレカには盗難保険が付いています。
明らかに挙動がおかしい利用がされた場合は、その場で利用が制限されることもあります。
例えば、東京で決済された10分後に北海道で決済データがあるのは明らかにおかしいため、「ありえない使われ方してるけど大丈夫ですか」と電話で確認してくれる場合も。
また、もし明細から不正利用を発見した場合には、迅速にクレジットカード会社に連絡をすることにより、ほとんどの場合は盗難された全額がしっかり返ってきます。
学生や新社会人の審査はそこまで厳しくない
大学生の審査はかなり緩いです。
「稼ぎが安定していないのに審査に通るのか」と思われるかもしれません。
しかし、クレジットカード会社が大学生にクレカを発行する理由が2つあります。
- 「もし延滞しても親が代わりに払ってくれるだろう」という安心があるから
- いずれ社会人になった時、そのまま自社のカードを使って欲しいから
ほとんどの大学生は親の扶養に入っています。
「調子に乗ってクレカで使いすぎてしまった…」際には、家族会議が開かれ、ぼこぼこにされながらも、クレカの使用履歴(ヒストリー)に悪影響を与えないために親が代わりに負担してくれるであろう、というクレジット会社側の考えが背景に。
それと同時に、大学生を優遇し囲っておくことは、将来の青田買いを意味します。クレジットカード会社の収益は「世の中の人がどれだけ自社のクレカを使ってくれるか」が鍵を握るため、大学生のうちから自社ブランドのファンを囲うことが大事という訳。
新社会人の場合も似たような理由から、緩いです。
大学生とは違い、年収や会社の雇用形態が安定しているか等、判断される材料が増えますが、1枚目2枚目であれば、余程のことがない限りは審査に通るでしょう。
枚数が3枚4枚と増えてくるに従い、審査に通りにくくなります。カード会社としても、カード発行料や管理費用は馬鹿にはならないため、実際に使ってくれる確証が無い人には発行したくはないから。
クレカのビジネスモデルから全体図がわかる
ここで、クレカを利用した際
を説明したいと思います。
この流れを押さえることで、「クレカを使うと露骨に嫌そうな顔をする店長」の理由まで、自然と考えられるようになります。
この図に一度目を通してください。
まず、あなたがクレジットカードで10000円のバッグを買うことを想定してください。
①あなたは、お店の人に「カードでお願いします」と言い、サインをする、もしくは4桁の暗証番号を入力することにより、バッグを手にすることが出来るわけです。
サインか暗証番号かは利用する店の方針によって異なりますが、セキュリティの関係上、次第に暗証番号が一般的に利用されるはず。
クレカは一昔前では主流であった磁気カード(シュっと決済端末に通す事で決済)とICカード(決済端末に刺して暗証番号を入力するタイプ)の2タイプがあります。
が、磁気カードはセキュリティ上あんまり優れてはいないため、最近の発行はまず間違えなくICカード。
磁気カードを利用している人には有効期限の更新の際にICカードへの切り替えが行われるため、次第に磁気のみのタイプは消えていくと思われます。
話がそれましたが、図の説明に戻ります。
この時点で、あなたの銀行から10000円は引かれていません。
②では、その10000円は誰がお店に払っているか。それがクレジットカード会社。ただ、まるまる10000円支払う訳ではなく、例えばこの場合には、9500円をお店に払っています。「クレカが使える環境を提供しているのだから、手数料をよこせ」という事。
ちなみに、この手数料の事を加盟店手数料と言います。加盟店の業種や規模によって大きく違いますが、一般的には3から5%と考えておけば大丈夫です。とはいえ、1%もあれば10パーセントもある。
違うがあると述べましたが、例えば、大きなチェーン店に対しては、ぜひ自社と主契約を結んでほしいから、加盟店手数料を低めにしたり、のちに述べますが病院ではクレカ導入のメリットが少ないため、低めに設定されている場合が多いです。
主契約の説明は、恐らく説明会でもしないレベルの高い話だと思いますが、せっかくですから説明を。
クレカ会社Aが飲食経営店Bに「3%の加盟店手数料で、うち経由でvisaを使えるようにしませんか」と主契約を結ぶとします。
この際に、お客がA社のvisaカードで決済した場合、当然3%は全てA社の収益になります。一方で、もし、お客がB社のvisaカードで決済した場合は、3%全てがB社の収益になるわけではなく、一部がA社の収益になります。
だから、クレカ会社は美味しい主契約を狙うために、だんだん加盟店手数料を下げていく泥沼の戦いになるわけ。加盟店を広げる役割をアクワイアラーと言います。
かなり脱線しました。図に戻ります。既に流れを忘れてしまったと思うので、復習を兼ねて①から追いなおしてみてください。
③そのあと、クレジットカード会社は支払い日に利用者から10000円を受け取る、という流れです。
つまり、
ということ。
お店は10000円のバッグを売ったのに、9500円しか貰えない。

お店だけ損しているじゃないか。クレカ会社の商売はなぜ成り立つのだ。
と思うのが普通です。しかし、クレカにはお店側も笑顔にするメリットがあります。
利用者もカード会社も加盟店にもメリットがある
三者のメリットを整理してみました。
利用者のメリット

あれ欲しいけど手持ちに現金がないから買えない。とはいえ、銀行で下すのは面倒だ。
という状況に対応が出来るほか、大金を持ち歩くリスクを抑えつつ、ポイントが貯まります。
還元率としては一般的には0.5~1%程度ですが、こつこつ使うことによって馬鹿にならないポイントが貯まる。現金払いをクレカ払いに変えるだけの簡単な作業。
航空会社と提携するクレカの場合、割と馬鹿にならないくらいマイルが貯まったりします。
カード会社のメリット
クレジットカード会社としては、もちろん加盟店から貰う手数料が収益源。
他には、購買データが得られる点も大きい。
いま、ビッグデータという単語が一般的に普及していますが、ITが企業を支えるといっても過言ではない今や、企業にとって購買行動に関する詳細なデータは喉から手が出るほど欲しい存在。
確かに、Tカードやポンタカードも似たようなことをやっています。このように、ビジネスに活用できるデータが取れる点も大きなメリット。
お店のメリット
大きく分けて3つ。
購買機会を逃さない
先程、利用者の項目で「あれ欲しいけど手持ちに現金がないから買えない。とはいえ、銀行で下すのは面倒だ。」という状況を説明しましたが、「では、クレジット払いでお願いします」と客に言われた際に、

申し訳ございません。うちはクレジット使えないんです。
としか反応が出来ないお店側は物凄くダメージが大きい。
なぜなら「なら、別のところで買います」や「銀行で下す間に買う気が失せた」の場合、せっかくの売り上げチャンスが0になってしまうから。
「商品が売れないよりは、クレジットカード会社に手数料を渡してでも売ってしまった方がマシ」という店側の考え方ですね。
購買単価が高くなる
クレカが使えると消費者はついつい「クレカが使えるなら、デザートも食べよう」「スーツのついでに靴下も新調しちゃおう」と、財布の紐が緩む傾向にあります。
現金に比べて1回当たりの消費金額が増えるという客観的なデータもクレジット会社の採用ページによく掲載されています。皆さんも使い過ぎには注意。
余談ですが、クレカが使える病院は少ないのですが「クレカ使えるの?なら、もう一回診察しとこ」と財布の紐が緩むことが決してない事からも、病院側が導入を渋るのに納得がいくかもしれません。
決済スピードが早くなる
現金だと、細かい小銭をじゃらじゃら。お釣りもじゃらじゃら。時間がかかります。
一方、クレカならシュッと通すだけ。
特にスーパーやコンビニなど、クレカが使えることでレジ混雑解消に大きく繋がる種類の加盟店では、少額決済であればサインをしなくていいシステムが整っているため、電子マネーと変わらない速度で決済が可能です。流石に、電子マネーの方が早いですが。
高級店であればクレカを利用できて当たり前の世の中だから
番外編として、そもそもクレカが使えないと不便にも程があるお店の場合は、メリットが云々の前に導入する必要がある。
それはつまり高級店。
高級レストランで15万円のお食事を現金払いしか出来ないお店は、流石に行きたくない。300万の貴金属を買いに札束を鞄に入れるのは、あまりに怖すぎます。
「そもそも使えて当たり前」という世間の認識が、導入のきっかけになるお店もあったり。
結局は、経営者は自分の経営の哲学に基づいて「手数料を払ってまでも、自分のお店にメリットの方が大きい」と考えれば、クレジットカード会社と提携する訳です。
ブランドホルダーと発行会社の違いについて
中級者向けの内容ですが、「ブランドホルダー」「発行会社」、この2つの単語の意味と違いは知っておくと便利。
ブランドホルダー
ブランドホルダーは携帯のネットワーク回線のようなイメージです。
日本の携帯会社が大きく3社しかないのと同じく、今から「我が社の新規事業としてネットワーク回線を1から立ち上げよう」と思ったとしても、莫大な時間とお金がかかるため、世界中でもJCB、VISA、MASTER(マスター)、American Express(アメックス)、DINERS(ダイナーズ)、(厳密には違うが)銀聯の6つのみがクレカのネットワーク回線を持っており、いわゆるブランドホルダーと呼ばれています。
ちなみに、JCBは日本、銀聯は中国、それ以外はアメリカの会社です。
ところで、友人と一緒にいる時「君のソフトバンクは電波あるね。僕のドコモは圏外だ」なんて経験ありませんか。
それと一緒で「VISAは使えるが、JCBは使えない」という場合もあります。
これは、お店がVISAとは契約を結んでいるが、JCBとは契約を結んでいないから。
つまりは、ブランドホルダーによって使える場所が変わる、ということ。
ちなみに、クレカの表面の右下にどこのブランドホルダーかを示すマークがあります。
発行会社
実際にクレカを発行している会社のこと。
クレカの裏側の右下に書かれています。
例えば三井住友VISAカードは、「三井住友カード株式会社という発行会社が発行し、VISAというブランドホルダーと提携する店舗で使えるクレカ」を意味します。
ちなみにJCBは世界で唯一、ブランドホルダーでもあり、発行会社でもある珍しい会社です。逆にVISAやAMEXは、クレカのネットワーク回線だけ管理する会社。実は彼らはクレカを発行していません。
デビットカードとは何か
ところで最近ではデビットカードも有名ですが、こちらは加盟店で決済をした瞬間に銀行口座から引き落としがされるカードの事。
海外では実はクレカと同じくらい利用されています。
中国の銀聯というブランドホルダーを紹介しましたが、あれは実はほとんどがデビットです。
クレカ業界は地味に就活生に人気
クレカ業界を志望するのであれば、ある程度は充分な質と量の説明をしたと思います。
ただ、クレカ業界は金融の中でも比較的少数精鋭の採用人数でもあることから倍率は高いです。
説明会やOB訪問で更なる知識を身に着けてください。ブログ内で就活の知恵を書いた記事もたくさんあるので、ぜひ。